介護職の仕事のなかで、ケアの難しさを感じる人が多く問題が発生しやすいのが認知症のケースです。認知症の人とのコミュニケーションにおいて、介護職は誰のために知識や技術を活用しているのかについて、改めて考えていくことが大事です。なぜなら、介護の仕事に慣れてくると効率の良さを考え、いつの間にか一方的に押し付ける自己満足のケアになっていることがあるからです。認知症だからという理由で、本人との意思疎通を徹底せずに排泄や食事介助などをしてしまうと、気持ちが通い合わないケアになる可能性が高いので注意が必要です。このやり方で介護を進めていると、利用者と信頼関係を築くことは難しいでしょう。

コミュニケーションのプロセスとして、挨拶などで相手の顔や声を確認してから対話がスタートするのが基本です。しかし、認知症の利用者のケアにあたるとき、意思疎通がスムーズにいかないままいきなり排泄介助や食事介助をはじめる介護スタッフが意外と多くいます。これでは、ケアそのものが場当たり的になってしまう可能性が高くなります。認知症になった人、認知症が進行した人とのコミュニケーションは難しいからと通常のプロセスを省くと、間違った方向に進んでしまうのです。利用者とのコミュニケーションというのはただ単に情報の伝達で成立するものでなく、人と人の間での意思疎通、心や気持ちの通い合いが行われ、互いに理解しあうことができてはじめて成立するものという認識が必要です。